テナント退去時の原状回復と電気工事|増設したコンセント・回路の扱い方

テナントとして借りていた事務所や店舗を退去するとき、電気まわりで最初に決めることは、入居中に自社で付けたコンセントや専用回路、照明器具などを「取り外して元に戻すか、残してよいか」です。この線引きは、民法の原則よりも先に、賃貸借契約書の原状回復の定めと、入居中の工事で貸主から受けた承諾の内容で確かめるのが基本になります。この記事では、退去を担当する総務・設備のご担当者さま向けに、契約と記録で確認する点と、撤去工事を退去日までに終えるための段取りを整理します。

入居側の工事(移転やレイアウト変更でのコンセント増設)は、オフィス移転・レイアウト変更の電気工事|コンセント増設と当日までの段取りで扱っています。

原状回復で電気まわりに出てくるもの

退去時の原状回復というと、壁紙や床、清掃を思い浮かべることが多いかもしれません。電気まわりでは、入居中に自社の都合で付け足した設備が主な論点になります。たとえば次のようなものです。

  • 机や機器の配置に合わせて増設したコンセント
  • 電子レンジや複合機、業務用の機器のために引いた専用回路
  • 売場や執務スペースに合わせて追加・交換した照明器具
  • 入居中に取り付けたエアコン

このうちエアコンの撤去・処分・入替は、原状回復に伴うエアコン工事のページで、管理会社・オーナー様向けにまとめています。この記事では、エアコン以外の電気工事を中心に扱います。

民法の原則と、契約書を先に見る理由

民法第621条は、賃借人は借りた物を受け取った後に生じた損傷について、賃貸借が終わったときに原状に復する義務を負うと定めています。ここでいう損傷からは、通常の使用によって生じた損耗と経年変化が除かれ、賃借人の責めに帰することができない事由による損傷も対象外とされています。

また、民法第622条が賃貸借について準用する第599条第1項により、借りた物に後から附属させた物があるときは、賃貸借の終了時にそれを収去する(取り外す)義務を負います。ただし、分離できない物や、分離するのに過分の費用がかかる物は除かれます。あわせて同条第2項では、借主は附属させた物を収去することもできるとされています。入居中に増設したコンセントや照明器具は、この「附属させた物」をどう扱うかの問題として考えることになります。

なお、建物の賃貸借では、借地借家法第33条に、貸主の同意を得て建物に付け加えた造作について、賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終わるときに、借主が貸主へ時価での買取りを求められるという定めがあります。どの設備が造作に当たるかは個別に判断されるもので、契約の特約で扱いが決められていることもあるため、あわせて確認しておきます。

一方、実際の負担区分は賃貸借契約書や特約の定めによって変わります。よく参照される国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、同省のページで「賃料が市場家賃程度の民間賃貸住宅を想定」していると説明されています。事務所や店舗の賃貸借にそのまま当てはまるとは限らないため、まず手元の契約書を確認するのが確実です。どちらの負担になるかは当社が判断するものではありませんので、契約内容をご確認のうえで工事の範囲をご指示ください。

契約書と入居中の記録で確かめる4点

撤去の範囲と、残してよいもの

▶ 原状回復の範囲:契約書の原状回復の条項や特約に、入居中に設けた設備をどう扱うかが書かれているかを確認します。

▶ 残してよいもの:次の入居者にも使えるとして、貸主がコンセントや照明をそのまま残すことを認める場合もあります。その場合は、残すものと取り外すものを一覧にし、合意した内容を書面やメールで残しておくと、退去の立会いで食い違いが起きにくくなります。

入居中の工事の記録と、館内の決まり

▶ 何を付け足したか:入居中の工事で貸主に出した申請書や承諾書、工事の図面や写真を探します。もともと建物にあった設備と、自社が付け足した設備を見分ける手がかりになります。記録がない場合は、現地で配線の状況を見ながら確認していきます。

▶ 申請と業者の決まり:テナントビルでは、工事の申請の期限や作業できる時間帯、分電盤など建物側の設備に関わる工事を行える業者が、館内規則や契約で決められていることがあります。退去の工事でも同じ扱いになるかを、管理会社に早めに確認しておきます。

撤去工事を退去日までに終える段取り

増設したコンセントや配線の取り外しも、電気工事の資格が関わる作業です。電気工事士法施行規則第2条では、配線器具を取り付けたり取り外したりする作業や、電線を造営材などに取り付けたり取り外したりする作業が、電気工事士などでなければ従事できない作業として挙げられています(露出型の点滅器やコンセントを取り換える作業は除かれます)。除かれているのは「取り換える」作業なので、退去で取り外すだけの場合は、露出型のものでも対象に入ります。内装の撤去業者にまとめて頼む場合も、電気の部分を誰が施工するかを確認しておきます。

段取りは、退去日から逆算して次の順に進めます。

  1. 契約書と入居中の記録から、撤去するもの・残すものの一覧をつくる
  2. 現地で、撤去する設備がどの分電盤のどの回路につながっているかを確かめ、工事の内容と見積りを固める
  3. 作業中に電気を止める範囲と時間を決め、管理会社への申請と、ほかのテナントへの影響がないかを確認する
  4. 内装の撤去や清掃など、ほかの原状回復工事と日程を合わせる
  5. 撤去の前後を写真に残し、貸主・管理会社への引き渡しで使える記録にまとめる

工事の記録として何を受け取っておくとよいかは、電気工事の完了時に受け取る記録|法人担当者が引き渡しで確かめる書類と写真でくわしく整理しています。

退去時の電気工事はスマイルパートナーへ

株式会社スマイルパートナーは、コンセント・専用回路の増設や分電盤の交換などの電気工事と、原状回復にともなうエアコンの撤去・入替を、法人からの請負として承っています。退去にともなう電気工事も、撤去するもの・残すものの一覧や、入居中の工事の図面・写真をお送りいただければ、現地を確認したうえで工事の内容をご相談します。図面や写真は、お問い合わせのページにあるLINEかメールでお送りいただけます。電気工事は日本全国で承っています(一部の地域は出張費をいただく場合があります)。現地調査・お見積りは無料です。対応している工事は各種電気工事・家電の取付工事のページをご覧ください。

出典:民法(明治29年法律第89号)第599条第1項・第2項、第621条、第622条、借地借家法(平成3年法律第90号)第33条、電気工事士法(昭和35年法律第139号)第3条、電気工事士法施行規則第2条(いずれもe-Gov法令APIで2026年11月時点の条文を確認)/国土交通省「「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について」

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