太陽光発電と蓄電池を両方入れたのに、いざ停電したときに動いた設備が思っていたより少なかった——法人施設ではこうした行き違いが起こります。停電時に何が動くかを決めているのは容量の大きさではなく、機器の仕様と、どの回路につないだかという設計です。この記事では、太陽光と蓄電池を「併用したときに何が変わるのか」に絞って、発注前に押さえておきたい点を法人のご担当者向けに整理します。
太陽光だけ・蓄電池だけでは、停電時にできることが違う
太陽光だけなら「日が出ている間、決められたコンセントだけ」
資源エネルギー庁は、住宅用の太陽光発電パネルについて、停電時でも「自立運転機能」で電気を使うことができると案内しています。示されている使用方法は次のような流れです。
①自立運転用コンセントの位置を確認する。②取扱い説明書で「自立運転モード」への切り替え方法を確かめる。③主電源ブレーカーをオフにする。④太陽光発電ブレーカーをオフにする。⑤「自立運転モード」に切り替える。⑥自立運転用コンセントに必要な機器を接続して使用する。⑦停電が復旧した際は、必ず元に戻す。(自立運転モード解除⇒太陽光発電用ブレーカーをオン⇒主電源ブレーカーをオンの順で復帰)
同庁は同じ資料で、メーカーや機種により操作方法が異なる場合もあるため、必ず取扱説明書を確認するようにと添えています。押さえておきたいのは、この案内の前提では電気が使えるのが自立運転用コンセントにつないだ機器に限られること、そして発電しているあいだだけなので夜間や悪天候では使えないことです。
切り替えの手間も機種によります。パワーコンディショナのメーカーであるオムロン ソーシアルソリューションズは、停電時の使い方を案内するページで、一部のシリーズについて「停電時の自立運転への切り替えは、自動設定になっている場合があります」と記載し、モニタリング機器に接続していれば複数台のパワーコンディショナを全台一括で自立運転に切り替えられるとも説明しています。手動が前提か、自動で立ち上がるのかは、施設の機種構成しだいということです。
▶ そもそも自立運転機能がない機種もあります
同じページには、自社の一部の形式について「自立運転機能はありません」とも明記されています。三相の自家消費システムでも、自立運転機能付タイプと、機能のない一般タイプが分かれています。既設の設備がある施設では、まず手元の機種の仕様を確かめるところが出発点になります。
蓄電池だけなら「貯めた分だけ」——使える範囲は工事で決まる
同社の案内では、蓄電システムは停電発生後およそ5秒で自動的に自立運転へ切り替わるとされています。人が操作しなくても立ち上がるので、無人の時間帯に停電した場合の空白が短くて済みます。
一方で、使える範囲はあらかじめ決まっています。同じページには「停電時に使える電気製品は、特定負荷用分電盤にあらかじめ配線しておいた機器です。家中の電気はまかなえませんのでご注意ください」と書かれています。特定負荷用の分電盤を使う構成では、どの設備が停電中も生き残るかが工事の段階で決まるということです。そして貯めた電力を使い切れば、そこで止まります。
蓄電池単体の容量の決め方や、平常時のピークカットの考え方は蓄電池の設置工事|法人の停電対策とピークカット活用で解説していますので、あわせてご覧ください。
併用で変わるのは「停電が長引いたとき」と「昼の余りの行き先」
停電中に「使いながら、ためる」ができる
シャープは住宅用のハイブリッドパワーコンディショナについて、停電時は太陽光発電で発電した電気を使いながら蓄電池への充電も可能だと説明しています。オムロン ソーシアルソリューションズも、太陽光に蓄電池を組み合わせることで、長時間の停電や夜間の電力使用にも対応できるようになるとしています。
法人施設で意味を持つのはこの点です。蓄電池だけなら貯めた容量を使い切って終わりですが、日中に太陽光から充電し直せる構成であれば、復旧の見込みが立たない停電でも翌日以降につなげられます。「何時間持つか」ではなく「何日回せるか」という設計に変わります。
平常時は「昼に使い切れていない電気」の行き先が増える
どんな施設で自家消費型の太陽光が向くのかは法人向け太陽光の導入モデル|PPA・リース・自己所有の違いと選び方で整理していますが、そこで効果が伸びにくい側に置かれる条件——夜間中心の事業所——こそ、蓄電池を足す意味が出てくる場面です。発電しても使い道のなかった昼の電気を、夕方以降へ回せるようになるからです。
売電する構成なら、行き先はもうひとつ増えます。シャープは住宅用のハイブリッドパワーコンディショナについて、周辺施設等の電力の使用状況によって売電量が抑えられる場合、売電できなかった電力は自動で蓄電池に充電されると説明しています。系統の都合で送り出せなかった分の受け皿にもなる、ということです。
ただし、そもそも昼に余っていない施設では貯める電気がないため、蓄電池を足しても効果は伸びません。充放電には変換のロスも伴います。▶ 現在の使用実績から「昼にどれだけ余っているのか」を先に押さえるのが順番です。導入モデル(自己所有・PPA・リース)によって余剰電力を誰のものとして扱うかも変わるので、あわせて確認しておくと判断が早くなります。
併用を発注する前に決めておきたい3つのこと
① 停電時に動かす範囲を先に決める
守りたい設備を洗い出し、消費電力と稼働時間から容量を逆算する手順は蓄電池の設置工事|法人の停電対策とピークカット活用のとおりですが、併用の場合はもうひとつ決めることがあります。▶ その設備群を、分電盤のどちら側にまとめるかです。停電中に生かす回路と、切り離す回路の線引きを先に確定しておかないと、容量が足りていても現場で配線を割り振れません。フロアの一部だけを残すのか、系統ごと残すのかによって、盤の改修範囲も費用も変わります。
② 既設に後付けするのか、まとめて入れ替えるのか
シャープは住宅用の製品について、一般的な分離型のシステムでは太陽光発電と蓄電池にそれぞれパワーコンディショナが必要になるのに対し、ハイブリッドパワーコンディショナは1台で制御できると説明しています(同社の場合、太陽光発電システム4.2kW以内かつ2系統以内、または5.5kW以内かつ3系統以内という条件が付きます)。設置スペースを抑えられる一方で、対応する蓄電池とセットでの導入が前提になります。この数字が示すとおり、住宅用のハイブリッド構成がそのまま載る法人施設は限られます。自社の規模でどの構成が取れるのかは、対象機種のカタログで確認することになります。
すでに太陽光がある施設では、既設パワーコンディショナの残りの使用年数と、先に触れた自立運転機能の有無を確認したうえで、後から蓄電池を足すのか、パワーコンディショナごと入れ替えるのかを判断することになります。ここを決めないまま見積を集めても、条件が揃わないので比較になりません。
そしてもうひとつ、この判断には見落としやすい分かれ道があります。▶ 停電中に太陽光から蓄電池へ充電し直せる構成になるのかどうかは、パワーコンディショナと蓄電池の組み合わせで決まります。ここが成立しない構成では、停電時に使えるのは蓄電池に貯まっていた分だけになり、前の章で書いた「何日回せるか」の話が当てはまりません。後付けの見積を取る段階で、機種の組み合わせごとにこの1点を確認しておくと、あとから気づく事態を避けられます。
③ 現地を見る人と、結線する人をどう手配するか
併用の構成は、分電盤の空き状況、機器の設置スペース、搬入経路といった現地条件に左右される部分が大きく、図面だけでは固まりません。拠点が複数ある場合はこの条件が拠点ごとに違うため、同じ仕様で揃うとは限らないという前提が要ります。複数拠点で調査と施工の基準を揃える進め方は、全国対応の電気工事|エリアごとの応援スタッフ手配と品質を揃える仕組みをご覧ください。
太陽光と蓄電池の併用工事は株式会社スマイルパートナーへ
「既設の太陽光に蓄電池を足したいが、いまのパワーコンディショナで連携できるのか」「拠点によって分電盤の状況が違うので、とにかく一度見てほしい」——併用の相談は、こうした現地確認から始まることがほとんどです。株式会社スマイルパートナーは千葉を拠点に全国へ伺い、現場ごとの請負・業務委託という形で調査から施工までお受けしています。施工の実働が足りずお困りの同業各社様や、拠点ごとに窓口が分かれてしまっている法人のご担当者様も、協力会社スタッフによる応援対応を含めてご相談ください。取り扱っている設備の範囲はEV充電器・蓄電池・太陽光の設置工事のページにまとめています。
※本記事は、資源エネルギー庁「停電時の住宅用太陽光発電パネルの自立運転機能について」(2020年7月6日)、オムロン ソーシアルソリューションズ「停電時の使い方」、シャープ「ハイブリッドパワーコンディショナ」の各公開情報をもとに作成しています。引用箇所を除き、本記事ではこれらの内容を要約・編集して紹介しています。自立運転の可否・切り替え方法・停電時に使える範囲は、メーカーおよび機種によって異なります。導入や更新の際は、必ず対象機種の取扱説明書とカタログでご確認ください。
